"Ellery Queen"US版DVD

『刑事コロンボ』のファンなら、クリエイターのウィリアム・リンクリチャード・レヴィンソンエラリー・クィーンを主人公にしたTVシリーズを製作していた、ということは多くの方がご存知と思います。

1シーズンだけで終わった短命なシリーズで、アメリカでも長いこと「幻の番組」状態だったらしいですが、2010年に全話を収録したDVDボックスセットが発売されています。


番組名は"Ellery Queen"ですが、商品名としては"Ellery Queen Mysteries"になっています。

ささやかなプロモーション・サイトがこちら。(デフォルトでテーマ曲が流れます。)
WATCH CLIPをクリックすると1話のオープニングが見られます。

最近になってこのセットの全話を見終えたので、これについて少し書きたいと思います。

まず、DVD商品としての説明です。


パッケージ
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日本製の「DVD-BOX」の堅牢な造りに比べると、外箱も中のディジパックの紙部分も簡易な造りですが、US版のDVDボックスセットは概ねこんな感じです。
日本のDVDよりも全体的に安価である理由の一つでしょう。


基本仕様

リージョンコード: 1
画面: 4:3
音声: 英語
字幕: 英語 (聴覚障害者用)
6枚組


ブックレット
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p2-3: ジェネット・ハッチンソン(EQMM)のエッセイ
p4-5: アンドリュー・ガリ(ストランド・マガジン)のエッセイ

p6-p7, p16-p17: 写真
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その他のページ: ディスク毎のエピソード・ガイド
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エピソード・ガイドでは各エピソード毎に以下の情報が書かれています:
- あらすじ
- オープニングのナレーション
- 初放送の日付
- 監督
- 脚本
- ゲスト出演者


メニュー画面

メインメニュー
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言語
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エピソード選択(エピソード内のチャプター選択画面はありません)
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特典

最後のディスクに、ウィリアム・リンクの「インタビュー」映像(18分)が収録されています。他には特典はありません。
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メニュー等では「インタビュー」と表記されていますが、質疑応答ではなく、リンクが一人で画面に向かって喋るだけです。即興ではなく事前に用意した原稿に従って喋っているような印象を持ちました。
内容的には、この番組についてはもちろんですが、既に他界した相棒のリチャード・レヴィンソンとの関係や、作家エラリー・クィーンとの出会い、などについても話しています。時折『コロンボ』との比較もしています。

短命に終わったのは意図したものなのか疑問でしたが、ここでリンクは「『コロンボ』や『ジェシカおばさん』と同じように、もっと長く続くべき番組だった」と言っているので、続けたいという意思はあったようです。
(ただし、続けられたとしても主演のジム・ハットンが1979年に45才で亡くなっているので長寿番組というのは無理だった、ということになりますが。)


画質・音質

十分良いと思います。
1975年製作のTVドラマのDVDとしては別に文句のないところだと思います。
宣伝によればディジタル修復処理が施されているそうです。たしかにゴミとかキズが気になる、ということはありません。

全体的に画面が少し暗い感じがしましたが、基本的に室内劇ですし、たまに外に出ても殆どの舞台はニューヨークで、太陽さんさんというような環境ではありませんから、これはこのシリーズの絵柄ということなのでしょう。

クィーン親子が釣りに出かけたり、映画撮影の見学でハリウッドに行ったりする話があるのですが、これらの野外場面はさすがに明るくなっています。しかし他の部分に比べて少し画質が落ちる(やや粗くボケ気味になる)ようです。

同時期の日本製TVドラマのDVDには、27インチ程度の画面で見てもかなりつらい画質のものもありますが、これはもう少し大きなサイズでも耐えうる画質です。
とは言え製作当時の標準的なTV画面サイズはもっと小さかったはずで、構図なども小さな画面を想定しているはずですから、あまり大きな画面で見るべきものではないでしょう。

音に関してもセリフはクリアに聞こえ、何も問題はありませんでした。


内容に対する感想

この番組が日本で放送されたことがあったのかどうか知りませんが、私はこのDVDで見たのが初めてです。

いや、面白いです。TV番組をこんなに楽しく見たのは久しぶりです。

現在でも『CSI』など面白いTV番組はありますが、"Ellery Queen"は「面白い」以上に「楽しい」のです。

私はエラリー・クィーンの小説は(ドルリー・レーンものを含めても)数冊しか読んだことがないのですが、あまり自分の好みには合わないと感じています。

また、キャラクターとしてのエラリー・クィーンにはあまり好感が持てません。

しかし、このTVシリーズでジム・ハットンが演じているエラリーは極めて好感度の高い人物で、小説のエラリーとはまるで別人です。
レイモンド・バーのペリー・メイスンが小説のメイスンとはまるで別人、というのと同じくらいに違う。
(ただし、原作者のクィーンはハットンのエラリーを大変気に入っていたそうです。)

サイモン・ブリマーという、自己顕示欲の強い気取った「ライヴァル探偵」が数話に出てくるのですが、このブリマーの方が私が想像する「小説の中のエラリー・クィーン」に近いくらいです。(ブリマーはそれ以上にファイロ・ヴァンスの雰囲気に近いと思いますが。)

何かを考えていると他のことへの注意が散漫になり、しじゅう物を忘れたり、あちこちにぶつかったりする。身なりに気を配っている様子はなく、いつも同じような格好をしている。こういうのは学究肌の人間にはよく見るタイプです。
それにしても殺人現場で机の上に兇器のナイフが置いてあるのに、その上に足を乗せようとしてリチャード警視に怒鳴られる、なんてのはちょっと原作のエラリーではありえないのではないでしょうか。

ブックレットによると、これより前の映画でもエラリーは多少そのような描かれ方をしているらしいです。ということはやはり、原作の人物像では一般大衆には受けない、と思われたのでしょうか。

驚いたことは「ミステリとしてのレベルの低さ」です。

殆どのエピソードはTV版オリジナルで、クィーンの小説とは無関係らしいのですが、
『コロンボ』と比べ物にならないのはもちろん、『古畑任三郎』どころか『名探偵コナン』でももう少しましだぞ、と思うものもありませす。

特に初期のエピソードは「ダイイング・メッセージ」に関わるものが多く、せいぜい「そう解釈することも出来る」程度のものでしかなく、「その程度の根拠で殺人という重大な罪を告発するのか」とか「言われた方も、たとえ真犯人でももう少し抗弁しろよ」とか感じることが多かったです。

にも関わらず。

一話としてつまらなかった、退屈したということがありませんでした。
パイロット版以外は1時間弱という短さのせいもあるのでしょうが、何と言ってもキャラクター、とりわけエラリーとリチャード・クィーン警視親子の魅力に尽きます。
極端に言って事件なんかどうでもいいというくらい、この二人のやり取りは面白い。ミステリ的な甘さなどは平気で許す気になってしまう。

小説でもリチャード警視はエラリーと違って魅力的な人物でしたが、このTV版でデイヴィッド・ウェインが演じるリチャードは見ていて飽きません。やや類型的ではあるかもしれませんが、このように生き生きと演じてもらえればそんなことはどうでもよろしい。
物語の構成上、結末近くになるまでは警察の捜査が物語を進めるから、自然とその指揮を執るリチャードの存在が大きくなる、という面もあるのでしょうが、それ以上に役者の魅力が大きいと思います。

この番組について書かれたもので必ずと言っていいほど取り上げられる特徴として、解決が提示される直前にエラリーが画面から視聴者に直接語りかける、ということがあります。
私はこの種の手法が嫌いで、それが『古畑』を好きになれない理由の一つでもあるのですが、なぜか"Ellery Queen"では気になりませんでした。

ところで、ヴェリー部長刑事(実際は「ヴィーリー」と発音するようですが)だけがエラリーを"Maestro"と呼んでいるのを面白いと思いました。(邦訳でどうだったかは記憶にありません。)

もう一人のセミ・レギュラーでフランク・フラニガンという新聞コラムニストがいるのですが、この人物はエラリーを"Junior"と呼ぶ。
また、エラリーはブリマーを"Simon"とファースト・ネームで呼ぶのにブリマーは彼を"Queen"としか呼ばない。

昔、野田昌宏がキャプテン・フューチャーについて、周囲の人物が彼を呼ぶ呼び方が原文では皆違い、そこに彼との関係性が現れているのに自分の翻訳ではそれが伝えられず残念だ、というようなことを書いていたのを、ちょっと思い出しました。


なお、ジム・ハットンの息子ティモシーは後に"A Nero Wolfe Mystery"という番組でネロ・ウルフの相棒アーチー・グッドウィンを演じているそうです。これもちょっと見てみたいな…と考え中。


[2014-02-23: 商品リンク追加

]
[2013-10-24: 商品リンク追加
『ジェシカおばさんの事件簿』全12シーズンのボックスセットと、シーズン終了後に製作されたスペシャル版4作のセット:

]

[2015-06-12: Amazon.comの仕様変更に対応/商品リンク追加・変更]


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