"The Man Who Never Was" (1956) UK版BD

2012年にOdeon Entertainmentから発売されたBDです。



この映画は日本未公開らしいので、簡単にスタッフ&キャストを書いておきます。

監督: ロナルド・ニーム
原作: ユエン・モンタギュー
脚本: ナイジェル・バルチン
撮影: オズワルド・モリス
音楽: アラン・ロースソーン

出演:
クリフトン・ウェッブ
グロリア・グレアム
ロバート・フレミング
ジョゼフィン・グリフィン
スティーヴン・ボイド
マイケル・ホーダーン

第二次大戦中の実話であるミンスミート作戦の顛末を描いた映画で、
作戦の責任者だったモンタギュー少佐の著作が原作です。



作戦そのものについてはネット上にも日本語の情報がいろいろありますからそちらをご覧ください。
以降は作戦の概略はご存知という前提で書きます。


BD

パッケージ
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基本仕様

リージョンコード: B
音声: 英語 LPCM 2.0 ステレオ
字幕: なし

メニュー画面
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- 場面選択
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- 静止画ギャラリー
スライドショー形式です。

- 予告編
発売元の公式チャネルにもアップロードされています。




このBDは2012年の発売なので、2010年にBBCが製作したドキュメンタリーが入ると嬉しかったのですが、残念。

このドキュメンタリーでホストも務めるベン・マッキンタイアの著作は2010年発表で比較的新しく、原著も邦訳も入手が容易なので、まずはこのあたりを読んでみようかと検討中です。




画質・音質

かなり良いと思いました。
オープニングに垂直線が見えますが、これ以外にはゴミ・キズなどは記憶にありません。
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場面転換で多用されるディゾルヴの際に色がおかしくなることが気になりましたが、これはBD制作上の問題ではないでしょう。


内容について

どんなものなのだろうか、くらいの軽い気持ちで見たのですが、大変面白かったです。
古い映画ですから、型にはまったわざとらしい音楽とか、説明過多な部分など、気になることはありますが、それらは些細な欠点です。

映画の前半はこの計画の立案から実行までを描きます。
様々な問題点を検討・克服してゆく過程が、単純化されてはいるようですが、一つ一つ描かれます。
だいたい私は「作戦準備」の過程って好きなんですよ。(こういうのを退屈だと感じる人もいるでしょうが。)

最近の映画ファン(特にアメリカ人)の中には、ストーリーの5W1Hがわかればそれ以外のものはムダだと考えるような人もかなりいるようですが、
この映画はそういう「ムダ」な部分も手を抜かずに描いているところが、私は好きです。

例えば、偽装した死体はイギリスからスペイン沖まで潜水艦で運ばれて、そこで投棄されるのですが、その潜水艦が途中で爆雷攻撃を受け、乗組員たちがじっと耐えている場面なども入っています。
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この潜水艦には、その前後に登場する主要人物は乗っていないし、モンタギューが死体を入れた容器を潜水艦に預けた後はスペイン沖での投棄場面に繋げても、ただストーリーを理解するという点では支障はないでしょう。
しかし、この場面がなければ、前の方で「潜水艦で運ぶ」と一言で説明されていたことが、実際にはどういう意味を持つのか、少なくとも私は想像もしなかったでしょう。

また、死体に偽装のための服装や所持品を装着する場面が、非常に長い。一つ一つ品をチェックしながら、延々と続く。何のためにここまで細かく見せるのだろう、と思い始めた頃、外部では爆撃音が聞こえ始め、やがて人の悲鳴なども聞こえてくる。モンタギューらは淡々と作業を続けるが、次第に表情が強張ってゆく。
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こういう、見る側の想像力を喚起させる描写は、最近はあまり見られなくなっているように思います。

史実に基づくということだったので、見る前は『暁の出撃(The Dam Busters)』(1954)のように、イギリス側が作戦を準備して、最後にそれが成功しておしまい、というような平板な展開だろうと予想していたのですが、中盤からドイツ側スパイとの知恵比べのようになったのは嬉しい驚きでした。

ヒトラーはイギリス側の期待どおりに偽情報を信じるのですが、ドイツ軍情報部の提督(作中に名前は出てこなかったと思いますが、IMDbの配役リストによればカナリス)は部下にこんなことを言います。

「総統は無論、特別の天分がおありだからその直感に従えばいいのだろうが、我々のような単なる情報将校は自分の頭脳に頼るほかはない。
率直に言って、神が我々の側について敵の作戦を教えてくれたなどとは、私は信じない。」

言葉の上では持ち上げておきながら明らかにバカにしているこの態度、いいですねえ。笑えます。

こうして、問題の少佐が実在したのかを確認するためにオライリーと名乗るスパイ(スティーヴン・ボイド)がロンドンに派遣されます。ここからはもう殆ど彼が主役です。

ここで私には特に気になる場面がありました。
ロンドンに到着直後、オライリーは現地での協力者であるタクシー運転手(シリル・キューザック)と接触しますが、この運転手が最後に
「ところで、俺には関わりのないことだが、あんたはなんでこの仕事を選んだのかね」と聞くと、
オライリーは笑いながら「俺はイギリス人が大好きだからさ」と答える。
(彼は「イギリスの女性」という意味で言っているように私は感じました。)
すると運転手が「ああ。彼らは愛すべき人々だ。」と言う。
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この二人の素性は全く描かれませんし、どこの国の人間なのかもはっきりしません。

運転手の方は、ロンドンでドイツのために活動しているのに、イギリス人について「愛すべき人々(lovable people)」と言う心境とはどんなものなのでしょうか。
この運転手はここにしか出てこないのですが、非常に印象に残りました。
オライリーに対しても「俺は自分の問題だけで手一杯なんだから、余計な面倒を持ち込むなよ」と宣言していますし、どうも積極的にドイツに協力しているようには見えない。何かそうしなければならない事情がある、というような裏を感じさせます。

オライリーについては、その後「かすかにアイルランドのような訛りがあった」という証言が出てきます。(タクシー運転手との会話でも「ダブリンから来た」と言っていますが、この時はまだ合言葉の一部とも取れるような気がしました。)
これが当たっているとすれば(そして、意図的にアイルランド人と思われるような喋り方をしているのでもないとすれば)、オライリーは「第二次大戦中にドイツのスパイとなってイギリスで活動するアイルランド人」ということになり、即座に『鷲は舞い降りた』のリーアム・デヴリンを想起させます。人前では終始笑顔で陽気に振舞うくせにその裏に危険さを感じさせるボイドの演技も、ドナルド・サザーランドが演じたデヴリンに似ています。
(もっとも、これは私が無知な日本人だからそう感じるのかもしれません。)

作戦そのものも面白いですが、そこに関わる人間たちの多くに、このような広がりを感じさせるので、「面白い」以上の映画になっているのだと思います。

さすがは後に『ポセイドン・アドベンチャー』を監督するロナルド・ニームだ…と思ったものの、この人は『オデッサ・ファイル』『メテオ』といった薄っぺらい映画の監督でもあることを思い出したのでした。





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