"The Man from Earth"(2007) UK版DVD



日本未公開作品だと思いますので、
まず作品について簡単に説明します。


製作の経緯

DVDカバーだけでなく、本編のオープニング・クレジットにも
"Jerome Bixby's The Man from Earth"
と、脚本家の名前が前面に出されています。
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これを書いたジェローム・ビクスビーは小説家でもありますが、
日本では短編集の一冊も出ていないようで、
あまりなじみがありません。

私自身、読んだ記憶があるのは、昔SFマガジンに掲載された
「火星をめぐる穴・穴・穴」(The Holes Around Mars)
という短編だけです。(これは、かなり笑えました。)

脚本家としてはTVの『ミステリー・ゾーン(トワイライト・ゾーン)』
『宇宙大作戦(スター・トレック)』、あるいは
映画『ミクロの決死圏』などに参加していました。
中でも『スター・トレック』の「イオン嵐の恐怖」(Mirror, Mirror)が有名なようです。

[2015-03-14追記: 最近になって
『恐怖の火星探険/It! The Terror from Beyond Space』(1958)
の脚本もビクスビーだということに気づきました。]

DVDの特典によると、ビクスビーはかなり若い頃からこの作品を構想していて、
亡くなる直前まで推敲していた脚本を、
末期にはその手助けもしていた息子のエマーソン・ビクスビー
製作者となって父の死後に作り上げたものだそうです。

エマーソンは事実上は共同脚本だと思えますが、
クレジットには名前がありません。
これは父の作品だ、という思いが強いのでしょう。

極めて低予算の映画で、IMDbによれば、
アメリカでもまともな劇場公開はされておらず、
映画祭での上映やDVD発売のみという国が多いようです。

しかしネット上で(違法アップロード/ダウンロードを含め)評判が広がり、
現在ではかなり認知度は高いようですし、
公式サイトによれば続編(TVシリーズか?)も製作されるようです。
(サイトのトップページをスクロールダウンすると、本作の予告編があります。)


スタッフ

製作総指揮: エマーソン・ビクスビー
脚本: ジェローム・ビクスビー
監督: リチャード・シェンクマン

出演:
デイヴィッド・リー・スミス
トニー・トッド
ジョン・ビリングズリー
エレン・クロフォード
アニカ・ピータースン
ウィリアム・カット
アレクシス・ソープ
リンダ・マーフィー.
リチャード・リール


あらすじ

辞職して町を去ることになったジョン・オールドマン教授の山小屋に、
近しい同僚数人が、別れのあいさつに集まってくる。
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唐突な辞職からジョンを心配する彼らの会話は、
やがて彼から奇妙な告白を引き出すことになる。

ジョンは、自分は石器時代に生まれ、
現在まで14,000年生き続けてきた
、と主張する。

肉体が30代後半のままで老化しないから、
周囲がそれをいぶかしむようになる前に、
10年程度で次々と居場所を変えなければならないのだ、と。

同僚たちはそんな話をすぐに信じるはずもなく、
ジョンに対して様々な質問をするのだが、
彼の答にはおかしなところがない。
といって、彼の話が本当だという証明にもならない。

そんな中で、ジョンが答えるのを拒む質問が発せられた。
その答によって、彼らはジョンが「何者」だったのかを知るのだが…。


基本仕様

リージョンコード: 2
ビデオ: PAL
AR: 1.78:1
音声: 英語 2.0 / 英語 5.1
字幕: なし
本編時間: 87分
発売元: Anchor Bay UK


パッケージ
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封入物は無し。


メニュー画面
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トップメニューは動画で、エンド・タイトル・ソングが流れます。
(個人的には、この歌がこの映画で一番嫌いな要素です。)


チャプター
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音声
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- 2.0 ステレオ
- 5.1 ドルビー
- 音声解説: エマーソン・ビクスビー(製作総指揮), ゲイリー・ウェストファール(批評家)
- 音声解説: リチャード・シェンクマン(製作/監督), ジョン・ビリングズリー(出演)


音声解説についての補足

ゲイリー・ウェストファールはこの映画には直接かかわっていませんが、
エマーソンの友人で、彼とともにジェロームの作品集の編纂を行っています。

ジェロームが書いた、製作されなかった『ミクロの決死圏』の続編の脚本も、
なんとかFoxの許可を得て収録したい、というような話もしています。


特典
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上記の音声解説に加えて、
以下の4種の短い「メイキング」映像が収録されています:

- セットにて (4:00)
- 物語の物語 (2:12)
- ジェローム・ビクスビーがSFに遺したもの (3:49)
- 脚本から映像へ (2:11)

それぞれの時間が短く、また,
同じ時に一気にまとめて撮影したように見えるので、
一つのメイキングの4つの章、という印象が強いです。

DVDの裏面には「4つのフィーチャレット収録」と書かれていますが、
誇大表示と言うべきでしょう。

内容は、多少撮影風景なども見られますが、
基本的にはスタッフ・キャストのインタビューです。
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時間が短い割には有意義だと思いましたが、俳優たちには
(僕は『スター・トレック』のこのエピソードに出ていたんだよ、というようなことよりも)
もう少し演技について聞きたかった。


UK版DVDを選んだ理由

この作品はアメリカ映画ですし、北米ではBDとDVDが両方出ています。


それなのに、わざわざUK版のDVDを選んだのは以下の理由からです。

- 特典が収録されているのはUK版DVDだけ。
- 高解像度によって恩恵を受けるタイプの映画ではなさそうだ。
- BDのレビューでは画質の評価が総じて低い。
(参照: DVDBeaver, Blu-ray.com, および米英Amazonのカスタマーレビューなど。)

結果として、UK版DVDには画質・音質とも特に問題はなく、
内容からも、もっと高画質だったら、と思うようなことあありませんでした。
これを選んで正解だったと思います。

(ちなみに、フランスではBD/DVDのコンボが、
ドイツではなぜか"The Last Witness"という無関係な韓国映画を
特典ディスクとして収録した2枚組スティールブックも出ています。




作品について

ほぼ全編、 一か所に閉じこもったままで、
数人の人物の会話だけで成り立っている、
という舞台劇のような性質から、
音声解説では『十二人の怒れる男』と比較していました。


なるほど、と思いましたが、私自身は見終わって
『ユージュアル・サスペクツ』を初めて見た時のことを
思い出していました。


あの映画の回想シーンを全てキントの語りに置き換え、
彼への尋問シーンだけで成り立っている、というものを想像すると、
雰囲気が近くなるような気がします。

それ以上に、見終わってから、今まで語られたことを確認するために
すぐにもう一度見たくなる、という気分が共通していました。

設定だけを聞くと、安部公房『人間そっくり』
(大部分が、ある作家と「自分は火星人だ」と名乗る訪問者との会話で成立している)
を連想したりもしますが、
本作にはあそこに見られたような諧謔性はなく、
真っ向勝負というか、地道な作りになっています。


登場人物に一人、しょうもないギャグをやりたがる剽軽者がいるのは、
話がマジメ一辺倒で重苦しくなりすぎるのを避けようとしたのかもしれませんが、
私には邪魔なものに思えました。

物語後半の議論の展開は、
西欧文化で育った人には重い意味があるのかもしれませんが、
日本人である私には、興味深いものではあっても
「まあ、そういう見方もあるよな」という論理的可能性にしか感じられません。

星新一が、映画『猿の惑星』についてのエッセイ(『きまぐれ博物誌・続』収録)で、
日本人と違って「欧米の人たちは、猿の支配にかなりの恐怖を感じるにちがいない。ちょっとうらやましいような気もする。」と書いていたのを、思い出しました。


ネット上での評価が非常に高い作品でしたが、
面白さとしては、『トワイライト・ゾーン』『アウター・リミッツ』の中の、
出来の良いエピソードくらいに感じました。

もっとも、映画ファンとしては、
あまり知られていない面白い映画を発見した時に
「何とか広めなければ」というような気分になるのは理解できますし、
CGに頼った、大がかりなスペクタクルばかりで
中身が空疎な大作にウンザリしている人ならば、
その対極にあるような本作を見れば
「これだ!」と嬉しくなるのでしょう。

全体としては、十分楽しめた作品で、私は気に入りました。
日本でもDVDとか、衛星放送の映画専門チャネルなどで、
(合法的に)広く見られる機会を作ってほしいものです。


題名

"The Man from Earth"という題名は普通に訳せば
「地球から来た男」となるので、最初は
どこか他の惑星とか宇宙基地のようなところが舞台で、
そこに地球から誰かがやって来るような話か、と思ってしまいました。

見終わって、なぜこの題名なのか少し不思議に思いましたが、
おそらく「彼はこの地(球)に生まれたものだ」
というような意味なのだろう、と思いました。

これ以上書くとネタバレになるので、ここでやめておきます。



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